〔 花菱商店の歴史 〕
現在のような「鰹節」という食品が誕生したのは室町時代ですが、それを薄く削った「削り節」というものが工業的に作られるようになったのは大正初期の頃です。それ以前は各家庭で削り器を用意し削っていましたが手間がとてもかかりました。そのころ豊後水道から伊予灘にかけてイワシやサバが良く獲れ、冷蔵設備の無い当時において大漁の時にはその始末に困るほどであったために鰹節の製法を応用しイワシ節、サバ節が考案されました。当時庶民にとっては高価であった鰹節は入手が難しいこともあり、地元愛媛県の海産物問屋の人たちがイワシ節、サバ節を原料とした削り節を製造し販売したところ、削る手間もかからず安価で栄養豊富な削り節は庶民の人気を博し、全国各地へ知られるようになりました。削り節大手各社が今の愛媛県伊予市に集中しているのもそのような歴史があるためです。
花菱商店はその削り節の発展期であった大正13年徳島県で創業しました。カツオ節の生産地であった高知県とイワシ節、サバ節の生産地であった愛媛県に近く、隣接地ならでは安価で質の良い削り節を地元の飲食店、家庭に提供していました。
昭和16年に組合員43名による徳島県削節工業組合が発足。戦時中、統制経済が益々強化され削節組合も企業整備令により9業者まで縮小されその一事業者となりました。昭和20年7月4日の徳島大空襲により多くの組合員は店舗住宅・機械設備を焼失し、焼失を逃れた花菱商店内に組合共同作業場を戦後に設置しました。当時は電力も統制され残業も連日続く事がありました。組合活動において特に原料取得は困難で多くの方の協力を得て産地からの買い付をしました。伊予に出張した際は同業大手の厚意に預り工場見学をさせていただきました。戦時中に生産設備をすべて撤去供出されており、工場復興のために新設備を据付運転中で規模はもとの2割程度の様に見受けられました。昭和25年に国家統制法は撤廃され昭和26年被災組合員は徳島市内各所にて個人営業として機械設備等を用意し営業を開始し、花菱商店も「株式会社花菱商店」として同年に設立しました |
昭和46年に農林水産省JAS認定工場(平成19年辞退)となり品質面、衛生面等においてそのノウハウや経験を積み上げております。また事業規模を追わないことにより質の良いものだけにこだわったものづくりを目指しております。本当に質の良い原料は生産量が少ないため、お客様に安定して良いものをご提供するために、製造量を追わず品質第一の製造をしております。昔ながらの熟練した目利き、微妙な勘とコツ、いつもと変わらないものを作り上げるために、人の技を大切にしております。これは小規模企業に出来る強みです。 |
〔 花菱商店のこだわり 〕
1.原料へのこだわり
削り節の品質は原料(鰹節、鯖節、鰯節など)の良し悪しですべて決まります。いい原料を仕入れるためには品質を見極める目利きと産地との信頼関係です。当社では古くから付き合いのある鰹節製造家と信頼関係を築いてまいりました。上質の鰹を追い求め鹿児島県山川町に移り住んだ土佐の鰹節製造家と今でも信頼関係を積み重ね我々が求める鰹節を提供してくれます。どこで漁獲された魚かその時の魚の状態はどうか、どのように製造された節・煮干しか、などの詳しい情報の入手と実際に目で見て、さわって、嗅いで、味わい、五感を研ぎ澄ませて選定します。いい原料は絶対量が少ないので大量生産は出来ません。
削り節について一通りの種類を製造しておりますが、弊社は特に鰹節に今後力を入れていきます。鰹節の中でも鰹節の王様「鰹本枯節」について注力していきその品質にこだわり続けていたいと考えております。最高の鰹本枯節削りを使いたいというお客様は是非当社にお声掛けください。満足のいくものをご提供できるよう努力させていただきます。
産地に出向き質の良い鰹本枯節を選別
2.こだわりの製法
仕入れた原料を最高の削り節に仕上げるために当社の職人は五感を研ぎ澄ませその原料の状態に合わせた製造をします。良質な原料の中にもそれぞれの個体差があります。製造機械の調整、温度条件、時間管理など今迄の経験がものをいいます。創業90年以上の蓄積された経験と知識が職人技を支えます。
魚節を一つ一つ丁寧に下処理します。(ムロアジの骨抜き風景)
風味を損なわないように常に手入れが行き届いた鋭いカンナ刃を 機械にセットし、ミクロン単位の調整を職人が行います
旧式の機械で職人が手の感覚で丁寧に削る
3.鮮度へのこだわり
削り節の中でもとくに鰹節は削った直後から酸化が始まり時間単位で風味が損なわれていきます。以前は削りたての新鮮な削り節は地元のお客様にしか提供できませんでしたが、現在は包装技術の進化に伴い不活性ガスで気密包装することにより削りたての状態で県外、遠方のお客様のお手元までお届けすることが出来ます。削りたてをお届けするために最新の設備投資、衛生管理にも力を入れており、経営資源を品質向上に集中させたコンパクトな工場をめざしています。昔ながらの手作りの良さを残しつつ新しい技術でしかできないことは積極的に取り入れ、お客様にとって何が出来るのかを常に考えてきました。
新式の機械で正確に素早く削る
残存酸素がほぼ0%なる精度を発揮する機械で素早く気密包装
4.無添加へのこだわり
巷で市販されているだし関連商品には多くの食品添加物が使われています。お料理に添加するだけでそれなりの味がつくもの、だしを取る商品でも最初から味がしっかりついているものもあり人気があります。
当社は一般的に人気があり売れる商品をつくるのではなくて、基本に忠実で本当にいい物、体にいいものに限定して製造しております。昔ながらの風味豊かないい物を作り続けるためには素材にこだわり続けなければそのような商品が提供できません。食はすべての源であるという事、健全な食卓づくりを創造していく事を製造者として肝に銘じて取り組んでまいります。
衛生的な環境で素材のみ完全無添加のだしパックを製造している様子。 だし袋も無漂白紙パックを使用しています
一般のお客様向けに削り節の詰め合わせなどもお届け出来ます
〔 会社概要 〕
1.経営理念
良質な削り節で食卓に感動を提供します。
2.経営方針
- 一、自然からの恵みを大切に用いて、美味しくて安全な食品を提供するとともに、心身に良い食生活の回帰・創造と健全な食卓作りを応援します。
- 一、伝統的な食材“削り節”を守り伝えることと、新たな可能性にチャレンジしていくことにより日本食文化、外食産業の発展・繁栄に貢献します。
- 一、世間から必要とされる組織・職場を創出することによって、地域と社員を支援していきます。
社名 | 株式会社 花菱商店 |
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卸売部 | 〒770-0802 徳島県徳島市吉野本町6-14 ℡088-652-6001 |
小売部 | 〒770-0802 徳島県徳島市吉野本町6-14 ℡088-652-6009 |
創業 | 大正13年 |
設立 | 昭和26年 |
事業内容 | 1. 削り節製造・販売 2.その他乾物の販売 |