〔 削り節について 〕

1.削り節とは?

削り節とはかつお節等をカンナで薄く削り、主に料理のお出汁用、トッピング用として使用するもので下記のように定義されております。

①.かつお、さば、まぐろ等の魚類をふしにしたもの又は枯節にしたものを薄片状、厚片状又は糸状に削ったもの
②.いわし、あじ等の魚類を煮干し等にしたものを薄片状又は厚片状に削ったもの
③.①及び②を混合したもの

【ふし(節)とは?】

魚類の頭、内臓等を除去し、煮熟(茹でる)によってたん白質を凝固させた後冷却し、その水分が26%以下になるようにくん乾(くん製、乾燥)したものです。

【かれぶし(枯節)とは?】

節(かつおにあたっては、表面を削ったもの)に2番かび以上のカビ付けをしたものです。カビ付けすることにより①くん乾だけでは取り除けない節内部の水分が除去され保存性が良くなる。②たんぱく質が分解されうま味が生じる。③中性脂肪が分解されだし汁の透明度が高まるなどの効果があります。

【煮干しとは?】

魚類を煮熟(茹でる)することによってたん白質を凝固させた後、乾燥したもの


2.削り節になるお魚たち

出汁が良く出る魚節・煮干しは主に赤味魚(青魚とも呼ばれ背の青い魚)が用いられます。

【本かつお】

皆様ご存知、鰹節になるお魚です。丹精こめて作られた鰹節はお味、香りともに芳醇です。特に半年近くかけて作られる鰹本枯節(カビ付け節)はお味、香り共に最高の逸品です。和食等お料理全般にお使いいただけます。  鰹節に適した鰹は鮮度が良く、脂肪分の少ない筋肉質な鰹が適しております。特に日本近海の南の温かい海域や、中西部太平洋で大きく育った鰹は味が安定し深みのある鰹節になります。多くの鰹が水揚げされる鹿児島県、静岡県で国内産鰹節の98%以上が製造されています。昔は高知(土佐)でも鰹節作りが盛んでしたが今では多くの製造家が鰹の集まる鹿児島県山川町に移住し鰹節作りを続けております。ちなみに鰹節は世界一堅い食品です。

【宗田(そうだ)鰹】

主にマルソウダという魚から作られ、風味はかつお節に近く血合い部位が多いいので濃いおだしが取れます。用途としてはそばつゆ、麺つゆ、だし醤油等に使われます。別名「メジカ」とも呼ばれ、高知県土佐清水市は全国の約半分の水揚げ量があり品質の良いソウダ節を製造しており全国に知られています。また関東ではカビ付けをしたソウダ枯節が好まれます。

【さば】

主にゴマサバが原料として使われます。混合節としてうどんだし、そばだし、煮物、味噌汁等に使われます。九州、静岡県で国内産サバ節の90%近くが製造されており、九州産は沖縄、九州近海で獲れた魚、静岡産は小笠原周辺で獲れた魚が主に水揚げ加工されます。サバ節を加工する際、煮熟(煮る)工程がありますが九州産は塩水で、静岡産は真水で煮る違いがあります。こちらも関東ではカビ付けをしたサバ枯節が好まれます。

【むろあじ】

伊豆諸島の特産品「くさや」でおなじみのムロアジが原料として使われます。アジ節はさわやかな甘味があり、幅広い用途でお使いいただいております。九州でも多く製造されますが中部地方での消費量が多く、うどん出汁等で良く使われます。

【いわし】

マイワシ、ウルメイワシ、カタクチイワシが使われます。他の魚に比べお味がしっかりとしていますので、調味料に負けないおだしを取る事ができます。イワシ節は九州、四国で多く製造され多くは西日本で消費されています。また煮干しの代表格「いりこ」はカタクチイワシを煮干しにしたもので特に香川県伊吹島産は鮮度、製法にこだわった最高品質を製造しております。

【まぐろ】

脂分の少ないキハダマグロの幼魚が使われます。マグロ節は九州産、静岡産が多く、ほんのり甘くくせがないことから椀物の出汁として、糸状に削ると白くきれいなことからお料理のトッピング用として使われます。関東ではメジ、関西ではシビと呼ばれ京都の料亭などで好まれます。

【その他】

獲れすぎた魚を保存するという観点からさまざまな魚が節・煮干しとして利用されてきました。サンマ、サケなどは節として、トビウオ、レンコダイなど比較的小さな魚は煮干しとして加工されます。もともとは九州、中国地方の日本海側で出汁として使われていたトビウオ(アゴ)が、「あごだし」として全国的に広がりました。現在ではとても人気があるためアゴ煮干し、焼きアゴの入手が困難になっております。また最近では魚以外に鶏肉などの素材を節に加工し、削り節として商品化されています。


3.鰹節の豆知識

魚は漁獲された後、死後硬直し筋肉中の酵素によって自己消化をし始めます。その熟成過程において体内の物質がうまみ成分に分解されます。鰹節の製造過程に「煮る」という工程がありますが、これは酵素によるこれ以上の自己消化の進行を止めうまみ成分を閉じ込める為です。さらに燻製しながら乾燥させ水分を飛ばし細菌、酸化などからうまみ成分を守りかつ保存性をよくしました。使用するカシ、クヌギなど燻煙は香気の付与と臭みの防止効果があります。ここまでの状態で「荒節」と呼ばれる鰹節になります。一般的に流通しているかつお削り節はこの荒節を削ったものです。鰹の味がしっかりとしており比較的安価なことから好まれます。
全体の2割程度の鰹節はこの荒節にカビ付けと熟成を施して「枯節」という鰹節になります。優良なカビ付けすることにより①くん乾だけでは取り除けない節内部の水分を除去したり悪いカビが生えることを防いだりと保存性が良くなる。②たんぱく質を分解してうま味が生じる。③中性脂肪を分解してだし汁の透明度を高めるなどの効果があります。この作業を2回繰り返し一般的な「枯節」の完成ですが、さらにこのカビ付けと天日干しの工程を4回以上繰り返し、旨味を極限まで高めたものが「本枯節」と呼ばれます。ここまで来ますと鰹節全体の数%の生産量になります。この本枯節は鰹節の王様と呼ばれ、くせの無い複雑な味と何とも言えない豊かな香りはまさに王様に相応しい逸品となります。 日本の伝統食材である鰹節は長きにわたり先人たちの試行錯誤と自然の偶然により生み出され、他のだし素材「昆布」や「椎茸」との相性も非常に良く、まさにの日本食にはなくてはならないものです。削り節はその旨味の塊を薄く削り短時間で旨味成分が抽出できるようにした完全無添加の調味料です。

<鰹節の種類>

鰹節の分類は前項でご説明したように製法により「荒節」と「枯節」に分かれます。それから形状でも分類します。比較的小さな魚体は鰹を3枚におろし半身のまま鰹節にします。つまり1尾から2本の鰹節が出来ます。形状が亀の甲羅に似ていることから「亀節」と呼びます。大きな鰹は3枚におろした半身を血合部分で背中側と腹側に切り分けます。つまり1尾から4本の鰹節が出来ます。これを「本節」と呼び背中側の鰹節を背節(せぶし)又は雄節(おぶし)、腹側の鰹節を腹節(はらぶし)又は雌節(めぶし)と呼びます。

●鰹節の分類表

●荒節、(本)枯節の違い

まとめますとこの表のように整理ができます。燻製にした半身の鰹節は「鰹荒亀節」、4本に切り分けた鰹をカビ付節にすると「鰹枯本節」といった具合になります。本枯節は4番カビ以上の鰹節を指しますので正式には「鰹本枯亀節」又は「鰹本枯本節」という事になります。

<鰹節の歴史>

鰹は古くから日本人に縁の深い魚で、昔は素干しにしたり、煮干しにしたりして食していました。また煮たときに出る煮汁を煮詰め調味料として広く使われていました。この調味料は大陸から味噌や醤油が伝わると姿を消すことになります。 現在と同じような鰹節は室町時代にその原型ができ全国に伝わり、特に質の良い鰹がよく獲れた高知の『土佐節』と静岡県伊豆の『伊豆節』が有名になりました。 しかし現在では物流の変化に伴い鰹の水揚げが西は鹿児島の枕崎と山川に、東は静岡の焼津にほとんどが集中しています。鰹節の産地もその周辺になり、かつての土佐や伊豆の生産者も現在の産地に移動することになりました。今では日本で流通している全鰹節の98%がそこで作られるまでに集約されています。

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●文政五年 諸国かつお節番付表
200年前の「諸国かつお節番付表」。
当時は全国各地で鰹節が盛んに作られていたことがわかります。ここ阿波国(阿州)内各地においても鰹節を製造していました。

<縁起の良い鰹節>

鰹は別名『松魚(まつうお)』と呼ばれ堅く紅色である鰹節の切り口が、冬でも青々とし不老長寿を示す松の年輪に似ていることから名付けられました。
鰹節は縁起物として、背中側の節(雄節)と腹側の節(雌節)を合わせて夫婦一対になるという意味で鰹夫婦節(カツオブシ)と呼び結納や結婚式の引き出物に、またその対にした形が亀の甲羅に似ていることから長寿のお祝いに、勝男武士(カツオブシ)、勝つ魚(カツヲ)と呼び出産祝い、快気祝いなどにも使われます。また現在では広くお中元、お歳暮、法要、お見舞いなどにもお使い頂けます。

<健康・美容>

鰹節に含まれるアミノ酸の種類は30種にも及び、人間が体内で合成できない必須アミノ酸9種類をすべて含んでおります。アミノ酸スコア―100点満点、たんぱく質もプロテインスコア―100点の良質のたんぱく質であることがわかっています。ちなみに鶏卵、大豆も両方100点です。
 また遊離アミノ酸も豊富で血中コレステロール値を下げ、血圧を正常に保つ働きのあるタウリンが含まれています。高たんぱく・低脂質である鰹節は、脳に良いと言われるDHA(ドコサヘキサエン酸)と血液サラサラ効果でおなじみのEPA(エイコサペンタエン酸)も豊富でお子様から大人までの毎日の食事に取り入れることで健康的な体造りに役立ちますし、生活習慣病のかたも安心してお召し上がりいただけます。まさに日本人の健康を支えてきた健康食品ということになります。
また旨味に関係しているイノシン酸が多く含まれていて、これを摂ることで細胞が活性化し、基礎代謝の向上や美肌を整えてくれる効果が期待でき、疲労回復効果もあり美容にも良いそうです。
科学的には上記のような事になりますが、五感を研ぎ澄ましながら鰹だしのみそ汁を頂くと豊かな香りとほっとする深みのある味は体の隅々にまで栄養がいく感覚があり、きっと心と体にいいのだろうなと本能的に感じます。現在多くの家庭で欧米化してしまった食卓は、本当の意味で見直す時期が来ているのかもしれません。

「鰹節の削り方」「だしの取り方」を動画でご紹介

●鰹節の削り方

●だしの取り方


4.その他、日本のだし素材

【だしのうま味三大要素】

日本のだし素材はうま味三大要素そのものであり、日本食にはそれが当たり前のように古くから取り入れられています。

【椎茸】

椎茸の栽培方法には自然の中で育てた原木栽培とハウスの中で育てた菌床栽培があります。おだし用と使う椎茸は主に原木栽培で育てられた原木椎茸を乾燥させたものを使います。かさは肉厚でつぼみ状の冬菇(どんこ)が上物として使われます。
戻したしいたけは料理の具材として、戻し汁はおだしとして使います。グアニル酸が多く含まれております。

【昆布】

昆布に含まれるうま味成分「グルタミン酸」と鰹節に含まれる「イノシン酸」はとても相性がよく、お互いの相乗効果によりうま味の強さが7倍にもなると言われています。そのおだしは上品でくせがなく、日本料理には絶対欠かせない基本出汁と言われる所以です。

国内産昆布の約9割は北海道産です。北海道では大きく分けて4種類の昆布は採れます。

真昆布

北海道南部の(函館周辺)で採れ、厚みがあり幅が広く高級昆布として関西地域で好んで使われます。上品な甘味をもち、清澄(せいちょう)なだしがとれます。主にだし昆布として、佃煮、塩昆布などにも使われます。

羅臼昆布

正式名は「りしり系えながおにこんぶ」といいます。世界遺産登録をされている知床半島だけで採れます。「昆布の王様」と言ってよいくらい非常に濃厚でこくのあるだしがとれだし色は黄色味を帯びております

日高昆布

種類は「みついし昆布」。日高沿岸で採れ、濃い緑に黒味を帯びている。繊維質も少なく柔らかく炊き上がるので、佃煮昆布、昆布巻、おでん用とし使われますが、だし昆布としても美味しくお使いいただけます。関東地域で好んで使われ、万能昆布として重宝されています。

利尻昆布

北海道利尻島、礼文島、稚内沿岸で採れます。薄味ですが風味の良い高級だしがとれます。京都の料理屋さんが好んで選び、会席料理、湯豆腐などのだしとして使われます。